ある日、突然相続人に!相続とは?

ある日突然相続人に! 相続は誰でも経験することになります。

 相続は、ある人が死ぬことによって始まります。人間は、いつかは死を迎え、相続は誰でも一度は経験するということになります。
いざ、相続が開始した場合、いったい何をしなければならないのか?

突然、父が亡くなった。その時どうする?
 医師の死亡診断書又は死体検案書を添付して7日以内に市町村役場へ死亡届を出します。
死亡届を受理した役場では受理後の翌月末までにその旨を所轄の税務署長に通知します。
それによって税務署は相続の開始があったことを知ることになります。
葬儀が終われば、遺言書があるかどうかを確認しなければなりません。
 遺言は、民法の規定より優先するので、遺言のあるなしによって相続財産の配分が大きく異なることになります。そのため遺言の有無は大変重要な問題です。
 公正証書遺言以外の自分で書かれた自筆証書の遺言が見つかったときは裁判所へ持っていって検認手続きをしなければなりません。
相続人は誰になるのか調査します。
 亡くなられた方の子供の頃から亡くなるまでの関連した事項の記載された戸籍をとって調査します。
具体的には、死亡した方の父母の除籍又は改製原戸籍、死亡した方本人の除籍、戸籍の謄本などを役場で取り寄せ、死亡された方に子供(養子も含む)が何人いるのかなどを調べます。
相続財産の調査
 相続財産は、だいたい次のようなものですが、マイナスの財産のチェックも必要です。
 積極財産 (プラスの財産)
土地や建物などの不動産、借地権、地上権などの不動産上の権利、車、家財道具、古美術品、宝石、現金、預金、貸付金、売掛金、手形、小切手などの債権、株式、ゴルフの会員権、電話加入権、著作権
その他の財産
 生命保険金は、受取人が誰になっているかによって相続財産になるかどうかが決まります。 受取人が奥さんになっている場合や相続人になっている場合は相続財産になりませんが受取人が亡くなった人本人になっているときは相続財産になります。
損害賠償請求権、慰謝料請求権
 亡くなった方の死亡の原因が事故などの場合、被相続人(亡くなった方)が、もし生きていれば取得したであろう損害賠償請求権、慰謝料請求権も相続財産として相続人に相続されます。
保証人の責任
被相続人が生前誰かの保証人になっていた場合、原則として相続人が相続することになります
身元保証人の責任
すでに具体的に発生している損害賠償義務については、相続することになりますが、身元保証はもともと個人的な信頼関係が基礎になっているので、身元保証人の地位までは相続されません。
借金があった場合、借金も相続財産です。
 土地や建物などの財産ばかりに目が行きますが、借金も相続財産の一部です。
 マイナスの財産としては、
手形や小切手の支払い債務、 保証債務、 税金(所得税 住民税 固定資産税 事業税) 葬儀費用など
 身元保証人の地位は相続しない
死亡退職金
死亡退職金は、被相続人と生計を共にしていた遺族の今後の生活を保障するためのものであり、相続財産には含まれません。
香典、弔慰金
 香典は、死者を供養したり、残された遺族を慰めるものとして贈られ、実際上は、葬儀を行う遺族の経済的負担を軽くするという目的が大きく、喪主に対する贈与と考えられるので、相続財産には含まれません。
弔慰金も被相続人と生計を共にしていた者の将来を助けるという意味あいが強く、相続財産には含まれません。
仏壇・墓地・位牌
系譜(系図のこと)・祭具(先祖の霊をまつるのに必要な仏壇・仏像・位牌)・墳墓は、法律で祭祀財産とされ、相続財産とは区別されています。
残された財産が借金だけの場合でも相続しなければならないのか?
 原則は、借金も相続しなければなりません。ただし、相続しなくても良い方法があります。
それは、相続放棄といってマイナスの財産が多いときは、プラスの財産もマイナスの財産もいっさいの財産をすべて拒否することで、借金を一銭も払わなくてもよい方法を選ぶことができます。
 しかし、あとで財産がでてきても相続できません。
 相続の放棄は、自分のために相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月以内(考慮期間といいます)に相続放棄する旨を家庭裁判所に申述しなければなりません。
この申述は、限定承認の場合と異なり共同相続人が各自別々に単独ですることができます。
考慮期間内に放棄しないと単純承認したものとみなされますので、注意が必要です。
 もし、この3ヶ月の考慮期間内に相続財産の調査が終わらず放棄するかどうか決まらない場合は、家庭裁判所に申し出て、その期間を伸長してもらうことができます。
 この相続放棄は、申述の受理という審判によって成立し、相続放棄をした者は、初めから相続人とならなかったものとみなされます。子が相続放棄をした場合、父の直系尊属が相続人になり、直系尊属がいないか、直系尊属も相続放棄をした場合、父の兄弟姉妹が相 続人になりますので、注意が必要で、負債を引き継がないためには、兄弟姉妹まで相続放棄をしなければなりません。
未成年者の放棄
 原則として親権者である父または母と利益が相反するので家庭裁判所によって選任された特別代理人が、未成年の子の法定代理人として、放棄の申述をしなければなりません。
プラスの財産とマイナスの財産のどちらが多いいか判らない時はどうすればよいのか?
 相続財産がトータルでプラスなら相続したいし、マイナスなら相続したくないが、どちらかはっきりしないこともあります。このような場合は、限定承認という方法を選べば良いということになります。
 これは、相続した相続財産の範囲内で借金を清算しますよという制度で、借金を清算したあと残余財産があれば相続ができます。

 限定承認は自己のために相続が開始したことを知った日から3ヶ月以内家庭裁判所に申立しなければなりません。しかも相続人の全員が共同して行わなければならないということになっており、相続人のうちの一人でも「私は、すべての財産を相続するよ」という単純
 承認(普通の相続)をすると他の方は相続放棄をするか単純承認するしかないということになってしまいます。
 また、この限定承認をする前に相続財産の一部でも処分するとすべての財産を相続することを認めたと見なされますので、注意しなければなりません。
相続財産の管理
 限定承認がされると、相続財産は一種の凍結状態となり、管理と清算がされます。管理については、限定承認をした者は、清算が終了するまで自己の固有財産と同一の注意をはらって相続財産の管理をしなければなりません。
 共同相続の場合は、家庭裁判所により管理人として選任された相続人が管理をおこなうことになります。
清算手続き
 限定承認後、5日以内に除斥公告をします。いっさいの相続債権者および受遺者に対し、限定承認をしたこと、及び2ヶ月を下らない期間内に債権の申し出がなければ清算から除斥する旨を付記して、その請求を促す公告をします。公告した期間が満了したら、申出債権者および知れている債権者に、法定の順序に従って弁済することになります。
 なお、債務の弁済につき、相続財産を売却する必要があるときは競売に付さなければなりませんが、家庭裁判所の選任した鑑定人の評価に従って相続人が相続財産の全部・一部の価額を弁済して、競売を止めることができます。