新しい民法

私たちの日常生活において基本となる民法が120年ぶりに抜本改正されました。

意思表示に錯誤があった場合には、取り消すことができるものとされ、錯誤を主張できる要件が明確になります。
錯誤による無効が成立するためには、重要な部分の錯誤が必要であるとされています。
代理をお願いした代理人に問題があった場合、一定の要件がそろって、始めて取り消すことができます。
代理人が相手方に対して行った意思表示について、意思の不存在、詐欺、脅迫に基づく場合には、その事実を知っていたのかどうか、過失なく知らなかったのかどうかは、代理人を基準にして、取り消せるかどうかが決まることになります。
法律行為を取り消した場合、原状に回復する等、具体的な処理の方法が規定され、わかりやすくなります。
原状回復、無償行為については相手方が善意であれば、現在残っている利益の範囲内で返還、意思無能力者は、現存利益の範囲内で返還、ということが明確に規定されます。
これまで10年と定められていた一般的な消滅時効の期間は、5年に短縮されます。
債権の種類に応じて細かく決められていたものを一本化してわかりやすくなります。
一般的な時効期間については、権利を行使できるときから10年間、と権利を行使できることを知ったときから5年間の2段構えになります。
時効の中断が「時効の更新」に、時効の停止が「時効の完成猶予」に改められ、わかりやすくなります。
新民法では時効の中断を時効の更新に、時効の停止を時効の完成猶予に改められます。
協議中に時効は完成しない
協議を行う旨の合意を書面で取り交わしていれば、最長5年間、時効の完成が猶予されます。
法定利率が変動制に
法定利率の年5%固定性をやめて、短期(貸付期間が1年未満)の市場金利に連動する変動制になります。当初は、年3%としたうえで、以後3年ごとに見直しが行われます。
債務の履行がないとどうなるか?
債務者に免責事由がない限り、債務者は損害賠償の責任を負うことになります。
債務が履行されないとき、債権者はどのようにして契約を解除すればよいか
原則として、催告をして契約を解除することになるが、明らかに債務者が履行を拒否いる場合などは、催告をせずに契約を解除することができる。
売買契約を結んだあと、売主に責任がなく、目的物の引き渡しができない場合、買主が支払うべき代金はどのようになるか?
不可抗力による場合、買主は、代金を払わなくてもよくなります。
債権者やが債務者が複数になる場合、どのような取扱いになるのか?
連帯債権の意味を明らかにしたうえで、連帯債権者同士の法律関係や、連帯債権者と債務者との間の法律関係が新たに規定されることになります。連帯債務の意味も明文化されます。
保証人の保護を手厚くするために極度額の定め等の規定が個人を対象とするすべての根保証に拡大されます。
個人を対象とするすべての根保証契約は、極度額について契約の定めがないと無効であるとするとともに元本確定事由も拡張して、さらに根保証契約の保証人の保護を図ることになります。
個人を保証人とする保証契約
事業用のお金の借り入れなどについて、個人が保証人になるときには、一定の場合を除いて、あらかじめ保証契約とは別に作成する公正証書の中で保証人が保証意思を明らかにし、その1か月以内に保証契約を締結しなければならなくなります。
保証契約をする場合、債権者や債務者は、保証人にいろいろな情報を提供したり、通知をしなくてはならなくなります。
保証人を保護するため、事業に関する債務についての債務者や債権者は、一定の情報を保証人に提供(通知)しなくてはならなくなります。
債権譲渡を利用しやすくなる仕組み
債権の譲渡を禁止する特約から譲渡を制限する特約とすることとなり、資金調達などの場面で債権譲渡が有効に活用されることが期待されています。
新たに条文化される債務引き受け
債務者に新たな債務者が加わるという併存的債務引き受けと、これまでの債務者に代わって新たな債務者が債務を負うという免責的債務引き受けとが条文に規定されます
弁済供託の見直し
弁済のための供託ができるのは、債権者の受領拒絶、債権者の受領不能、債権者の不確知の場合です。債権者の受領拒絶については、債務者から債権者への「弁済の提供」がされたことが条件となります。
相殺と差押えの優劣関係
相殺の対象となる債権の差押え前に取得した債権で相殺をするのでであれば、どちらの債権についても弁済期の先後を問わず、相殺できることが明文化されます。
契約自由の原則
契約は当事者の自由であり、「申し込み」と「承諾」という意思の合致によって成立することと、契約の成立には法定された方式がないことが明文化されます。
定型約款とは
定型約款とは、不特定多数の者を相手方として行う取引で、その内容が画一的であることが取引の当事者にとって合理的であり、それらを内容とすることを目的として、あらかじめ準備された条項です。
定型約款が契約の内容となる場合
取引の当事者が定型約款を契約の内容とする旨の合意をしたとき、または定型約款の準備をした者があらかじめその定型約款を契約の内容とする旨を相手方に表示していたときには、原則として定型約款が契約の内容になります。
定型約款の変更
定型約款は、その変更が相手方の一般的な利益に適合する場合や、契約をした当初の目的に反することなく、かつ、変更に一定の合理性がある場合には変更することができます。
売買契約の売主は、買主に対抗要件を備えさせることが義務付けされる?
売買契約の売主は、義務として買主に対抗要件を備えさせるなどの義務がルール化されることになります。
買主の権利
買主は、契約一般のルールに従って債務不履行によって生じた損害賠償請求や契約解除ができるほか、売主に目的物の補修を求め、代替物や不足分を求めることや代金の減額を請求することが認められることになります。
消費貸借契約
書面などで諾成的な消費貸借契約を締結した借主は、貸主から目的物を引き渡されるまでは契約の解除をすることができるとされています。
賃貸借の期間
賃貸借の契約期間(存続期間)は、これまで民法で20年を超えることができないとされていましたが社会的なニーズに応えるため、50年と定めることができるようになります。
敷金の取り扱い
判例を条文化し、敷金の定義、敷金が返還される要件やその範囲等に関する規定が置かれます。
委任契約の報酬
委任契約には、無償の委任と有償の委任があります。報酬が支払いされる有償の委任には、事務処理をした割合に応じて報酬が支払われる場合と、達成された成果に対して報酬が支払われる場合、があることが明確になります。