相続・遺言の知識

 相続とは、人(被相続人)が死亡した時、生前に持っていたすべての財産が当然に相続人に引き継がれること。
 当然に引き継がれるとは、相続人が相続の開始したことや、相続財産がどこにどれくらいあるかなどを知っていても知らなくても、それとは関係なく相続は開始し、故人(被相続人)の全財産が相続人のものになること。

相続財産
プラスの財産
 不動産、動産、預貯金、有価証券、債権など
 生命保険金・・・受取人が誰になっているかによります。

 遺族年金等の遺族給付は相続財産ではない

マイナスの財産
  借金、保証人としての責任、税金

法定相続人
① 配偶者   常に相続人となる
② 第一順位  直系卑属(子・孫)
       子は常に相続人  子が亡くなっていれば孫が相続人
③ 第二順位  直系尊属(親・祖父母)
       子や孫がいないときに限り相続人となる
④ 第三順位  兄弟姉妹
       子も親もいないときに限り相続人となる
遺言書の種類
① 自筆証書遺言
 家庭裁判所への検認の申し立てが必要
② 秘密証書遺言
③ 公正証書遺言
 証人二人
④ 危急時遺言 証人3人 遺言の口授 読み聞かせ 署名・押印
 20日以内に遺言の確認申立、検認の申し立て
⑤ 特別方式の遺言
 伝染病隔離病者、在船者、船舶遭難者の遺言
                                 
遺言を作成するメリット
民法では被相続人の子はすべて平等の共同相続人である。
 しかし、各家庭にはこのような形式的平等になじまない事情がある。
遺言を作ることによって法律では及ばないようなきめの細かい配慮ができる。
遺言でできること
1. 財産処分に関すること・・・遺贈・寄付行為
  遺贈(遺言で財産を贈ること)  特定遺贈・・・家をやる
                  包括遺贈・・・財産の半分をやる
2. 相続に関する事項
① 相続分の指定、指定の委託(遺言執行者などの第三者に)
  相続人の法定相続分を変更すること
  例・・・妻に全財産を相続させる
  財産全部についてすること
② 遺産分割方法の指定、指定の委託
③ 遺産分割の禁止(5年間に限り)
④ 相続人相互の担保責任の指定
  共同相続人の担保責任の減免、加重
⑤ 遺留分減殺方法の指定
⑥ 相続人の廃除、廃除の取り消し
3. 身分に関する事項
①認知
②後見人の指定(未成年)
③後見監督人の指定(未成年)
4. その他
①遺言執行者の指定、指定の委託
②祭祀承継者の指定
遺留分とは
 ①相続人が自分の取り分として主張することができる相続財産における一定
  の割合
 ②遺留分の割合は誰が相続人になるかによって異なる
  配偶者と子・・・・2分の1
  配偶者と直系尊属・・・2分の1
  配偶者と兄弟姉妹・・・2分の1  など
  兄弟姉妹のみ・・・・ない
遺言書の作り方
遺言できない者・・・満15歳になっていない者
          親でも代理できない
         認知症、酩酊状態など意思表示できない者
遺言の種類
1. 特別方式・・・死が切迫しているときなど、ごく限られた場合についてのみ認められている。
  遺言者が普通方式の遺言ができるようになって6か月間生存した時は自動的に効力が失われる。
2. 普通方式
①自筆証書遺言・・遺言書検認の申し立てが必要になる
②秘密証書遺言・・証書を誰にもわからなくする
         利用者はほとんどいない。
③公正証書遺言
 証人 二人 公証人の口授 記・署名押印
遺言を書くときのきまりごと
1. 書面でないといけない。 口頭ではダメ
2. 日付と署名・押印が必要
3. 自筆証書遺言は必ず全部自分が自筆で書くこと
  タイプ、パソコン、ワープロはダメ
4. 必ず作成した日付を自署すること  平成24年7月吉日はダメ
  遺言書自体に書くこと   封筒にだけ書いてもダメ
  遺言を作るのに何日もかかった場合は、遺言を完成させた日を書く
5. 氏名を自署し、押印する
  ゴム印などはダメ
  戸籍上の氏名にしておいた方が賢明である。
6. 加除訂正は特に注意が必要
①変更した箇所に印を押す・・・変更するときは、変更箇所に2本線を引き、変更する前の字が読めるようにし、そこに印を押す。その印は遺言の末尾の自署の下に押した印を使用する。
② 変更した場所を指示し、遺言に付記する。・・・遺言の末尾または変更場所の欄外に「5行目11字目のあと4字加入」というように、できるだけ詳しく記載しておく。
③ その記載のあとに氏名を自署する。(押印は不要)
7. 契印 遺言が数枚になるときは一体のものであることを示すため、前後のページにわたってひとつ印を押す。
  物件の特定方法に気を付ける。
  文言・・・相続させる-----OK    全部任せる-----ダメ
     譲渡させる----ダメ
  遺留分には気を付ける
  特別受益の主張は、金額も明示、
こんな人は遺言を(遺言をした方がよい人)
1 相続人が誰もいない場合
2 一般的に相続人間に不和がある場合
 ・相続人間に異父、異母の兄弟姉妹がいる場合
 ・後妻をもらった場合
 ・長男亡き後、家に残って看取ってくれた嫁や子供が誰も寄り付かないのに、ずっと寄り添って看病  してくれた独身の妹がいる場合
3 存続させたい事業のある場合
  後継ぎと考える者一人に株式、店舗、営業権、特許権などを集中して相続させ、経営全般を委ねる。
4 農業経営者の場合
  農地が分散される。
5 夫婦に子供がいないとき
  夫婦間に子供がなく、現在住んでいる家と土地しかない場合
  相続人が配偶者と直系尊属又は配偶者と兄弟姉妹となってしまい代償金を払うハメになってしまう。
6 住んでいる土地と家しか相続財産がないとき
7 相続財産上に相続人の家がある場合
8 先妻の子供が居ながら後妻をもらったとき
9 先妻の子と後妻の子がいる場合
10 籍を入れていない妻がいる場合
  内縁の配偶者がいる場合
11 先に死んだ長男の嫁の世話になっているとき
  亡くなった長男の嫁には相続権がないから
12 世話になった人に財産を残したいとき
13 相続人のうち行方不明の者がいる場合
14 離婚状態にある別居中の配偶者がいる場合
  子供が居なければ両親又は兄弟姉妹と配偶者が対立するから
  
法定相続では困る人は遺言をしておくことをお勧めします。